君と、世界の果てで
海辺の家に着いたのは、日が暮れてからだった。
駐車スペースに車を停めようとしたとき、俺は異変に気付いた。
塀と窓の間に、人影がある。
若い男のようだ。
脳裏に、陸の首のアザが浮かぶ。
まさか……。
空き家っぽく見えるから、泥棒の類いがのぞいているだけだろう。
男は、エンジンの音に気づいて逃げようとした。
急いで車を降りる。
「待て!!」
相手の歩幅より、俺の歩幅が広く、何とか追いついて。
その腕を、つかんだ。
「誰だ、テメェ!!」
怒鳴ってやると、男はビクリと肩を震わせた。
やはり若い。同い年くらいか。
黒の長髪。
それに似合わない、一重瞼の、パッとしない顔。
こいつ、どこかで……
すると、玄関の方から、ドン、と音が聞こえた。
思わず、そちらを振り返る。
その隙をついて、男は腕を振り払い、あっという間に逃げてしまった。
追いかけなければ。