君と、世界の果てで
しかし何故か、俺は、玄関の方が気になってしまった。
男を追いかけるのをやめ、玄関に近づく。
「誰かいるのか?」
返事はない。
音は中からしたようだ。
急いで合鍵を取り出し、扉を開ける。
「……!?」
そこには、思いがけない光景があった。
深音が、玄関にうずくまっていたのだ。
「おい!!どうした!?」
「!?」
深音は、真っ青な顔で、こちらを見上げた。
大きな瞳には、涙が浮いている。
「翼さん……」
「どうした?何かあったのか?」
「翼さん……!」
深音は突然、俺の胸にすがりついた。
怖い思いをした、子供のように。
細すぎる肩が、震えている。
頼りない背中を、思わず引き寄せた。
「……大丈夫、もう大丈夫だ……」
俺は、それ以上何と言っていいかわからず。
ただ彼女を、抱きしめた。