君と、世界の果てで
陸や他のメンバーは、外に出た途端、ファンに囲まれてしまった。
おぉ、花やら手紙やら贈られてる。
すげぇな。
「ほら。無理そうだろ。帰るぞ」
「うぅ……そうね……」
紗江を説得し、人だかりを背に歩こうとした瞬間。
「あっ!兄貴!」
と声をかけられてしまった。
「テメェ……でけぇ声で、呼ぶな」
「えっ、だって、帰っちゃいそうだったから」
小走りで、こちらへ近づいた陸は、たくさんの紙袋をさげていた。
「え?お兄さん?」
「えー、まあまあカッコイイけど、似てないね」
と、陸のファンがヒソヒソ言う声が聞こえた。
陸が飛び抜けて美形のせいで、俺の評価はいつも“まあまあ”。
陸は19歳、俺は22歳。
物心ついてから言われ続けて、もう慣れっこだ。
「みんな、気をつけて帰ってねー」
陸がファンに向かって手を振る。
すると、追っかけ娘達は、キャッキャと興奮した様子で、素直に帰っていった。