君と、世界の果てで
「ミシンは?」
「2階に、前から置かせてもらってます」
「そうか……すぐできそうか?」
「……多分」
「あのなぁ。深夜に一人で帰る気なのか?」
そういうと、深音は涙目になった。
「怖い……」
「当たり前だ」
「どうしよう……」
「……早く仕上げちまえ。送ってくから」
さすがに今日は遠慮できないらしく、深音はコクコクとうなずいた。
「そういえば……翼さんは、何か用事があったんですか?」
「あ?あぁ……練習しようかと思って。
お前と一緒で、近所迷惑だから」
この家は、店舗だったせいか、近くに民家はない。
だから陸は一発で気に入って、ここに決めたんだ。
いつでも、ベースを弾けるから。
「邪魔だろうから、一階にいる」
「そんな……逆に、すみません」
「いいから、早くやれ、ソレを」
またコクコクとうなずくと、荷物を持って、階段を上がっていった。
例のソールの高い靴が、大きな音を立てる。
……妹がいたら、こんな感じなんだろうか。
心配で、身がもたねえな……。