君と、世界の果てで
「どうだった?」
「あぁ、久しぶりに見たけど、良くなってたな」
素直な感想を述べると、陸の顔がパッと輝いた。
「だろ?だから、ボーカル変わってから、何回も誘ったのに」
「悪いな。暇じゃなかったんだよ」
「兄貴もバンドやってたもんな。
また、やりたくならない?」
「ならねぇな」
「えぇー」
「二度とやらねぇから、それもお前にやったんだろ」
「そうか。兄貴が活動再開したら、これ、取られちゃうのか」
それは嫌だなぁ、と、ベースをケースごと抱きしめた。
陸は俺と違い、感情を素直に顔に出す。
誰にでも気安く喋りかけるし。
天性の甘え上手だ。
俺は、この弟が嫌いじゃない。
ただ、何故か紗江にはいつも、素っ気ない。
今でも、軽く挨拶をしただけで、後はずっと俺に喋りかけてばかりだ。
しびれを切らした紗江が、俺の肘をつついた。