君と、世界の果てで
「あ?」
「報告しなきゃ」
「何の?」
「はぁ?信じられない」
紗江は、はぁとため息をついた。
陸はきょとんと、俺を見上げる。
紗江が先に口を開いた。
「なかなか会えなかったから、報告が遅くなってごめんね」
ごめんねと言うわりには、顔がフニャフニャ笑っている。
「あぁ、それか……それこそ、またで良いだろ」
「ダメよ。陸君は、翼の弟なんだから。
早く知らせるべきよ」
「え、何?何なの、兄貴」
困惑の表情を浮かべた陸に、紗江が言った。
「私たち、婚約が決まったの」
そう。
決まったというか、決められた。
来年大学を卒業して、親父の会社を手伝う事になった途端。
紗江の親から、申し込みがあったのだ。
断れば、会社の大事な取引先が1つ無くなる。
俺に選択肢は無かった。
まぁ、紗江に不満があるわけじゃないから、良いのだが。