君と、世界の果てで


「あ?」


「報告しなきゃ」


「何の?」


「はぁ?信じられない」



紗江は、はぁとため息をついた。


陸はきょとんと、俺を見上げる。


紗江が先に口を開いた。



「なかなか会えなかったから、報告が遅くなってごめんね」



ごめんねと言うわりには、顔がフニャフニャ笑っている。



「あぁ、それか……それこそ、またで良いだろ」


「ダメよ。陸君は、翼の弟なんだから。
早く知らせるべきよ」


「え、何?何なの、兄貴」



困惑の表情を浮かべた陸に、紗江が言った。



「私たち、婚約が決まったの」



そう。


決まったというか、決められた。


来年大学を卒業して、親父の会社を手伝う事になった途端。


紗江の親から、申し込みがあったのだ。


断れば、会社の大事な取引先が1つ無くなる。


俺に選択肢は無かった。


まぁ、紗江に不満があるわけじゃないから、良いのだが。


< 13 / 547 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop