君と、世界の果てで
渚と崇文は、じゃあ、一杯ひっかけるか、と言いながら、観客席へ向かった。
「お前は?」
「あたしも、待ってます」
「目立つし、その方が良いかもな」
その辺にあったパイプ椅子に腰かけると、深音も隣に座った。
観客席へ行くやつがほとんどで、控え室は、ほとんど人がいなくなっていく。
ふわりと、甘い香りがする。
今日は緊張してるのか、少しきつめだ。
「また、髪染めたんだな」
「黒いと顔がきつく見えるんですよね。
魔性の女っていうか」
「……どっちにしても、小悪魔だよな……」
「え?」
「いや、なんでもない」
へんなの、と深音は笑った。
「緊張するか?」
「はい、多少は」
「俺も、多少してる」
「翼さんも?」
意外そうな顔で、見上げられた。
「久しぶりだからな」
久しぶりの緊張感。
それを感じたのか、深音が口を開いた。