君と、世界の果てで
「陸に歌を与えられて、やっと胸を張れるようになったから。
緊張しますけど、やはり、嬉しいです。歌える事が」
深音は、こちらを見て、ふわりと笑った。
「翼さんのおかげです」
「は?俺?」
「だって、陸に音楽をくれたのは、翼さんでしょう?」
そりゃあ、そうだけど……。
弟ののんきな顔を思い出してぼんやりしていると。
突然、手が温かくなって。
それが、深音の手に繋がれた事に気づく。
「ありがとう、翼さん」
ふわりと笑ったまま、深音は、少し頬を染めた。
「……そ、そういうのは、ライブがうまくいってから言え!」
思わず、手をふりほどく。
最高に照れてしまって、そんな事しか言えなかった。
「あの……」
「あぁ?」
「ライブがはねたら、家まで送ってくれますか?」
「あぁ……そのつもりだけど」
「良かった」
深音は、またふわりと笑った。
その笑顔に、緊張した心が溶かされた気がした。