君と、世界の果てで
……こんな風にお願いされて、断れるはずがない。
断れるやつがいたとしたら、そいつは鬼だ。
「……すぐ、気が変わったりしてな」
「変わらない!」
「そうかそうか。
わかった。しばらく、付き合ってやるよ」
頭を撫でてやると、彼女は嬉しい、と言って笑った。
この、小悪魔め。
俺のベースを必要とされるのは嬉しいが。
これじゃ、手が出せない。
歌姫の機嫌を損ねたら、ベーシストとしてそばにいる事もできなくなる。
深音が望むなら、俺はその家来となって、一生ベースを恋人にするだろう。
……切ねぇ……。
その気になれば、こんな細い体、どうとでもできるのに。
手に入れたいと思う以上に、手放すのが怖い。
ちくしょう。
陸、許せ。
俺は。
報われないとわかっているのに。
お前を想う、歌姫を。
愛してしまった。