君と、世界の果てで
どうせ、何を言っても信用されないだろう。
「嘘ばっかり。ライブの後も、あの子を送ったくせに」
「見たような事言うじゃねえか」
「そう、見たのよ。駅前で、良い感じだったじゃない」
「クリスマスだから、そう見えたんだろ」
ふぅ、と息をはいた。
もう終わりにしよう。
「俺が前のバンドやめた時の事、覚えてるか?」
「え?」
彼女は、突然関係の無い話題をふられて、困惑した顔をする。
「やめた理由、知ってるか?」
「……何?」
「知らないよな。知ろうともしなかったんだから」
紗江が、その整った眉毛を歪めた。
「1年前くらいか。
突然、曲が書けなくなってな」
「曲?」
「これっていう原因は無いんだが。
とにかく。
突然、何も、浮かばなくなった。
たったの1フレーズも」
「…………」
忘れたかった当時の事。
陸が亡くなる直前に、思い出された事。