君と、世界の果てで
「ショックだった。
ただのベーシストとしてじゃなく、作曲して生きるのが、夢だったから。
一時的な物かと思ったけど、結局それから半年、何も浮かばなくて……やめた」
「そう……だったの」
「お前は、喜んでたな」
紗江は、無邪気に、俺の時間が余った事を、喜んだ。
悔しかった。
自分が、たった1つ、誇りにしていたもの。
たった1つの夢。
ほんの少しの、才能。
全てが、儚く枯れたのだと思った。
「……それを今更責めるの?」
「違う。お前は、悪くない」
結局、何も持たなくなった俺は、紗江に寄りかかっていたのだから。
ただ、紗江に必要とされる事で、ほんの僅かな自尊心を保とうとしていた。
だから、陸が死ぬ直前に残した言葉は、鋭いトゲになった。
「ただ……また、バンドをやって。
このまま、続けたいと思ったんだ」
「……じゃあ、続けたら良いじゃない」