君と、世界の果てで
(2)重なる影
潮風が、コートの裾を翻す。
朝から、母親から連絡があった。
『紗江ちゃんと別れたの?』
単刀直入に聞いてきた。
「おぅ」
『そう……本当なのね。わかったわ』
「むこうから、何か言われたのか」
『ううん、大丈夫よ。
また、帰ってらっしゃいね。温かくするのよ』
あれ以来、なんとなく家に居づらくて、ほとんど引っ越すように、荷物を海辺の家に運んでしまった。
きっと、紗江の家から苦情がきたのだろう。
両親とも、何も言わないが。
引っ越して、良かったのかもしれない。
自分の勝手で、迷惑をかけて。
どんな顔をしていいか、まだわからない。
両親が、紗江の親に頭を下げる姿を想像すると、罪悪感でいっぱいになる。
そんな気持ちを切り替える為に、アコースティックギターを片手に、外へ出た。
ギターは昔、作曲用に買ったものだ。