君と、世界の果てで
(2)兄弟喧嘩
「……何だお前」
あのライブから1週間後。
午前中で講義を終え、大学から帰って来た俺の部屋に、銀髪の男がいた。
陸だ。
しかも、人のベッドを占領して、寝てやがる。
「おい、コラ、このフリーター」
頭をはたくと、陸はのっそり起き上がった。
あのライブの日から、久しぶりに会う。
俺はこの実家に住んでるのだが、陸は独り暮らしだからだ。
高校卒業と同時に、家を出ていった。
それから、滅多に帰って来なかったのに。
「いてーよ、お兄ちゃん……」
「気色ワリィな、誰がお兄ちゃんだ」
兄貴に決まってんじゃん。
陸は何も気にしない様子で言った。
「どうしたんだ。珍しいじゃねぇか」
「うん……」
おい、本当にどうしたんだ?
いつもヘラヘラ笑ってる奴なのに、今日はどこか沈んで見える。
「何か食うか?」
「今はいいや」
「ちゃんと食ってんのか?ガリガリじゃねぇか」