君と、世界の果てで
(3)歌姫の家来
崇文と俺は微妙な空気のまま、いつもの練習場所のスタジオに向かった。
「おはようございます」
当たり前だが、深音はいつもと同じ様子だった。
白い肌に、花びらのような唇が浮いている。
いつもは癒される彼女の美しい容貌が、今日だけは不安を煽った。
いや、今日だけじゃない。
思い出したくなかったが。
陸の、葬儀の時。
あの時の、微笑み。
あれは、本当に見間違いだったのだろうか。
深音は、何か、隠している。
そんな気がする。
そして、根拠もなく彼女を疑う自分にイライラした。
全員が集まってから、崇文が口を開いた。
「……そうそう、またライブハウスが出演バンドを募集してんだけど……どうする?
対バンで、来月なんだけど」
「あたしは……やりたい」
「俺もまぁ、暇だから大丈夫。翼は?」
「あぁ……大丈夫だ」