君と、世界の果てで
「じゃあ、ありがとうございました」
練習後、いつものように、深音を家の近くまで送り届ける。
車を降りる前に、深音が口を開いた。
「あの……服、もうすぐできますから。
そしたら、連絡します」
にこ、と首を傾けて笑う。
「あぁ。なぁ、深音……」
「はい?」
「……いや、またでいい。気をつけろよ」
「?……はい」
ストーカーの事を聞こうかと思ったが、あまり遅くなってもまずいだろう。
……いや。
俺は臆病なだけかもしれない。
深音が隠している何かが、俺を不快にするものなら。
知りたくないのかもしれない。
ただ、俺が好きな、今のままの彼女でいてほしい。
深音が細い角を曲がるのを見届け、車を走らせようとした。
すると。
「……!?」
彼女が歩いていった方から、悲鳴らしき声が、聞こえた。
俺は慌てて車を停め、深音を追いかけた。