君と、世界の果てで

(4)お願いを聞いて



夜は、なかなか眠れなかった。



『あの女は、人殺しだ』



智の言葉が、頭の中をグルグルまわってしまったのだ。



それでも翌朝、約束通りに家の前まで迎えに行くと。


目を紅く腫らした深音が現れた。


頭が、白に近い金髪なので。



「……ウサギかよ、お前は」



そう言ってやると、



「可愛いから?」



と言って、笑った。



「あの、少し上がっていってください」



深音の家は、細い道の奥にある、小さな一戸建てだった。


輸入住宅なのだろう。


ヨーロッパの香りがする、白い外壁の家だ。



「い、家の人は?」


「母がいます。お礼を言いたいって」



はぁ、母親に事情を話したのか。


そりゃあれだけぐちゃぐちゃな顔で帰ったら、追求されるわな。



「でも、俺、こんな格好だし」



お宅訪問にはタブーとされる、パンクファッション。


深音は、この方が好きだと言っていたからだ。


< 178 / 547 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop