君と、世界の果てで
(4)お願いを聞いて
夜は、なかなか眠れなかった。
『あの女は、人殺しだ』
智の言葉が、頭の中をグルグルまわってしまったのだ。
それでも翌朝、約束通りに家の前まで迎えに行くと。
目を紅く腫らした深音が現れた。
頭が、白に近い金髪なので。
「……ウサギかよ、お前は」
そう言ってやると、
「可愛いから?」
と言って、笑った。
「あの、少し上がっていってください」
深音の家は、細い道の奥にある、小さな一戸建てだった。
輸入住宅なのだろう。
ヨーロッパの香りがする、白い外壁の家だ。
「い、家の人は?」
「母がいます。お礼を言いたいって」
はぁ、母親に事情を話したのか。
そりゃあれだけぐちゃぐちゃな顔で帰ったら、追求されるわな。
「でも、俺、こんな格好だし」
お宅訪問にはタブーとされる、パンクファッション。
深音は、この方が好きだと言っていたからだ。