君と、世界の果てで
「親の権力使って、兄貴の人生横取りしようとしてんだろ」
形の良い唇が、絞り出すように言った。
「良いのかよ、それで。
紗江ちゃんは、安定が欲しいだけだろ。
相手は誰でも良くて。
兄貴がたまたまフリーだった時を狙って、告って。
ただ、親も自分も安心したいだけじゃないか。
絶対、ズリィよ」
「…………」
すぐに反論の言葉が見つからない。
陸が、正直すぎるからだ。
「お前なぁ……何を根拠に……」
「俺も紗江ちゃんに告られたから。兄貴と付き合う前に」
は?
寝耳に水だ。
陸は、俺を真っ直ぐ見ていた。
嘘じゃないのか。
何故か、ひどく喉が渇くのを感じる。
不快感は、一層重くのしかかった。
「何が、言いたいんだ……」
「あんな女の為に、音楽やめんなよ」
「何だって?」
「女や親の為に、音楽をあきらめてんじゃねぇって、言ってんだ」
陸は、その美しい顔で、俺を見上げる。