君と、世界の果てで
深音が持ってきた、やけに沢山の荷物を後部座席に乗せて、車を出した。
「あぁ、緊張した……」
「なんで?結婚の申し込みでもないのに」
「お前より、もう一発美人だったからかな」
「もう!」
深音は頬をふくらませた。
いつも通りだ……良かった。
俺は密かに、安心のため息を吐く。
昨日は、このまま深音が、知らない女になってしまいそうだったから。
「とりあえず……、うちで良いのか?」
「えっと、あの……」
「何だよ」
「水族館、行きたいです」
「は?」
また、いきなりだな。
そばにいてやるとは言ったが、そんなデートみたいなことをするとは聞いてない。
こいつ、意外に元気なんじゃないか?
「……うちの近くのでいいか?」
「はいっ」
家が海辺だからか、わりと近くに水族館はある。
もしかしたら、それを知ってのリクエストか。
昨日の事を、考えたくないのか。
とにかく、いつもより気合いの入った、派手な深音を乗せて。
海に向かって、車を走らせた。