君と、世界の果てで
よくもまぁ、そんな話を即興で作れるもんだ。
母親も感心した目で見ている。
「じゃあ……お姫様と王子様は、結婚できないの?」
女の子が、とても悲しそうな顔をした。
ほら、言わんこっちゃない。
適当に話を作るからだ。
しかし深音は、相変わらず優しい口調で、子供に語りかけた。
「大丈夫。
実はね、この後、お姫様は王子様と、世界の果てに逃げるの。
誰にも見つからないところよ。
そこには水族館が、無いの。
だから最後に見に来たのよ」
「せかいのはてで、結婚するの?」
ぱあ、と子供の顔に笑顔が戻る。
「そうよ。
ママ以外には、内緒ね」
女の子は、紅潮させた頬でこくりとうなずいて、母親に手をひかれて、いってしまった。
深音はヒラヒラと手をふる。
「お前……詐欺師になれるな」
「ふっふっふ。そうでしょ」
彼女はすぐに、お姫様から、イタズラ娘の顔に変わる。