君と、世界の果てで


よくもまぁ、そんな話を即興で作れるもんだ。


母親も感心した目で見ている。



「じゃあ……お姫様と王子様は、結婚できないの?」



女の子が、とても悲しそうな顔をした。


ほら、言わんこっちゃない。


適当に話を作るからだ。


しかし深音は、相変わらず優しい口調で、子供に語りかけた。



「大丈夫。

実はね、この後、お姫様は王子様と、世界の果てに逃げるの。

誰にも見つからないところよ。

そこには水族館が、無いの。

だから最後に見に来たのよ」


「せかいのはてで、結婚するの?」



ぱあ、と子供の顔に笑顔が戻る。



「そうよ。

ママ以外には、内緒ね」



女の子は、紅潮させた頬でこくりとうなずいて、母親に手をひかれて、いってしまった。


深音はヒラヒラと手をふる。



「お前……詐欺師になれるな」


「ふっふっふ。そうでしょ」


彼女はすぐに、お姫様から、イタズラ娘の顔に変わる。


< 191 / 547 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop