君と、世界の果てで
メンズのラインもあるが、とにかく派手なため、バリバリ日本人顔の俺には合わないのだ。
「あ、あっち見て良いですか」
深音が指差す先から、ぶわぁと、甘く強い香りがした。
透明なアクリルの棚に、香水が所狭しと並んでいる。
「くせっ」
「そういう事言わないの」
手をひかれて、気づいた。
そういえば、深音から、いつもの甘い香りがしない。
「今日は忘れたのか?」
「いいえ。終わっちゃったんです」
「陸がやったやつが?」
「はい。だから代わりが欲しくて」
「どこのブランドだ?」
「それが、あたしをイメージして調合してもらったとかで……」
「同じ物は、買えないわけか」
深音は、こくりとうなずいた。
「うーん……また、今度にしようかな」
「何だよ、ゆっくり見りゃいいだろ」
「だって翼さん、ずっと口で息してるもの」