君と、世界の果てで
さすがボーカリスト、あっさりバレたか。
香水は自分もたまに使用するが、それはほんの少しだ。
こんなに一度に色んな匂いがするのは、好きじゃない。
「大丈夫だ」
「無理しなくていいですよ。
あたし、お手洗いに行ってきます。
あっちの喫煙コーナーで待っててください」
深音は、勝手に決めてさっさと行ってしまった。
離された手が、突然冷たく感じる。
トイレ、混んでるだろうな……
言われた通りに、煙草吸って待つかな。
香水店の前から去ろうとした時。
視界の端に、知っているブランドのマークがうつった。
土星の上に十字架が乗ったような、あのマーク。
「あ」
あいつ、見えなかったのか。
棚の上の方に、深音の鞄のマークが、立体のキャップになった瓶があった。
そのブランドの香水だ。
よく見れば、黄色、黄緑色、ピンクと3種類もあるじゃないか。
……後で教えてやるか。
いや……
俺はある事を思い付いて、店員を呼んだ。