君と、世界の果てで
「ケーキは良いけど、夕飯はどうするんだ?
家に帰るのか?」
「えぇー、一緒に食べましょうよ」
「そりゃ、良いけど。
何か食べたい物あるか?」
「翼さんの手料理!」
ズル。
あぶね。
走り出した車のハンドルから手が滑った。
「マジかよ……」
「マジです」
「一応聞いてやるが、何を作れと言うんだ」
「んー、じゃあ……シチュー」
「そんなもんでいいのか?」
「はい」
「しょうがねぇなぁ……」
そのまま車を家の方に走らせ、近くのスーパーで食材とケーキを調達した。
会計をすませ、屋上駐車場に出ると。
それまで晴れていた夕方の空は、雲で真っ黒になっていた。
「降りそうだな……」
買物袋を提げて、駐車場の端っこに停めた車に移動する間に。
「げっ」
「わぁ」
こらえきれなくなった雨が、降ってきてしまった。
しかも、結構強く。