君と、世界の果てで


「はい。うん、上出来」


深音は、体を離して、俺を見ると、ニコリと笑った。


鏡を見なくてもわかる。


お前のその満足そうな笑顔を見れば。



「ありがとな……本当に」


「いえいえ。どういたしまして」


「あ」


「はい?」



ネクタイの刺繍を見てやっと、あることを思い出した。


乾かしていたジャケットの内ポケットを探る。


深音は、きょとんとした顔で、こちらを見ていた。



「良かった、濡れてなかった」



出てきたのは、小さな箱。



「ほれ」



それを、深音に手渡した。



「これは……?」


「誕プレ」


「えっ!?」


「気に入るかは、わからねぇけど」



深音は完全に予想外という顔で、目を丸くした。



「開けて……いい?」


「おぅ」



細い指が、大事そうに、ゆっくりと箱のリボンをほどく。


何故かこっちまで、緊張した。



「見たらしまっとけ」



緊張に耐えられず、彼女に背を向け、ギターケースを開けるふりをした。


< 206 / 547 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop