君と、世界の果てで
「はい。うん、上出来」
深音は、体を離して、俺を見ると、ニコリと笑った。
鏡を見なくてもわかる。
お前のその満足そうな笑顔を見れば。
「ありがとな……本当に」
「いえいえ。どういたしまして」
「あ」
「はい?」
ネクタイの刺繍を見てやっと、あることを思い出した。
乾かしていたジャケットの内ポケットを探る。
深音は、きょとんとした顔で、こちらを見ていた。
「良かった、濡れてなかった」
出てきたのは、小さな箱。
「ほれ」
それを、深音に手渡した。
「これは……?」
「誕プレ」
「えっ!?」
「気に入るかは、わからねぇけど」
深音は完全に予想外という顔で、目を丸くした。
「開けて……いい?」
「おぅ」
細い指が、大事そうに、ゆっくりと箱のリボンをほどく。
何故かこっちまで、緊張した。
「見たらしまっとけ」
緊張に耐えられず、彼女に背を向け、ギターケースを開けるふりをした。