君と、世界の果てで


「……大げさだな」



ギターを片手に、頭を撫でてやると。


ふわりと、花の香りがして。


深音が、胸に飛び込んできた。


予期せぬ衝撃に、足がもつれ、ベッドに腰かける形になってしまった。


ギターが床に転がり、音を立てる。



「おい!おどかすなって!」



もうダメだ。


これ以上触られたら、理性がもたない。


体を引き剥がそうとした時、彼女が顔を上げて、口を開いた。



「あたし、話さなきゃいけない事があるの」



黒い瞳は、濡れていた。


それが涙だと気づき、胸がしめつけられる。



戸惑う俺の目を見て、彼女はきっぱりと、言った。






「あたし、本当は、陸の彼女なんかじゃなかったんです」




と。




< 208 / 547 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop