君と、世界の果てで


そう言えば、紗江も言っていた。


陸には紗江と付き合う前から好きな人がいたため、その仲はすぐにだめになってしまったのだと。


その人の、ことなのだろうか。



「あたしは、学校でいじめられていて。

孤独だったあたし達は、すぐに仲良くなって……」


「…………」


「陸のバンドのボーカルがやめてしまったのは、去年の春でした。

あたしはその時、声が良いからって、誘われたんです。

陸にカラオケで歌わされて、ほめられて、その気になっちゃって」



深音は当時を思い出したのか、苦笑いを浮かべた。



「陸は、初めて、あたしに生きがいをくれました」



話すたびに、大きく息を吐いて。


また、吸い込んで。


深音自身が、自分を落ち着けようとしているようだった。


あるいは、泣きそうなのか。



「だけど、1度ライブに出た途端、ストーカー被害にあうようになりました」


「ホームページに写真を載せたのと、同時期か」


「そうです」



深音は、長い睫毛を伏せた。

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