君と、世界の果てで
(2)崇文の心配
「うわ、スゲェ!」
いつもの練習場所の貸しスタジオで、崇文が声を上げた。
前に頼まれた、洋楽スタンダードのロック風アレンジ。
それを楽譜にできたのは、深音と一線を越えてから3日目の事だった。
「弾いてから言えよ」
「はいっ」
崇文は、楽譜に目を通しながら、ゆっくり指の動きを確認する。
それにあわせて、ベースを弾く。
そこに渚のドラムが加わると、たちまち華やかなサウンドに変わった。
深音が、途中から歌いだす。
ギターだけが時々トチったが、何とか最後まで通すと、崇文はまた、スゲェ、と言った。
「めちゃめちゃカッコイイじゃないっスか……」
少年のように、目をキラキラさせて言われ、悪い気はしなかった。
「突然どうしたんだ、翼」
「……どうしたんだろうな。
アレンジの神が降りてきたか?」
「あぁ、俺にも作曲の神が降りてこねぇかなぁ」