君と、世界の果てで
渚は驚いた顔をし、崇文はため息をついた。
深音だけが、意味深に微笑んでいる。
「っていうか、深音も、また一段とうまくなってねぇ?」
「えっ、そう?」
「そうだな。声にまた広がりが出たというか……」
珍しく真面目な顔の渚が、あっと声を上げた。
「新しい彼氏でもできた?」
ぺいーん。
ベースをいじっていた俺の指から、ピックが弦を弾いて飛んだ。
部屋に、間抜けな低音が響く。
渚の発言が的を得ていて、焦ってしまったのだ。
あの時、一線を越えてすぐ、何故か俺にアレンジの神が降臨した。
そして何故か深音は、声が良くなった。
あの日。
初めての情事のあとの朝。
ギターを持って片付けようとしたら、まだ寝ている深音の顔が見えて。
そうしたら、何故か頭に音が、ふってわいたのだ。
慌てて、それを五線譜に書きつけた。