君と、世界の果てで
行為の後、深音は静かに口を開いた。
「翼さん……」
「ん?」
「就職しても、バンド続けてくれる?」
「土日休みだから、できるだろ」
「……良かった……」
深音は、嬉しそうに笑った。
「お前は……プロを目指さないのか?」
「メジャーって事?なら……まだ、わからない」
曖昧な微笑みを浮かべたまま、困ったように眉毛を下げた。
「チャンスがあれば、乗りたいけど。
あたしみたいなワガママは、商業として歌う事に、向いてない気もする」
確かに。
メジャーになった途端、つまらなくなった歌手は腐る程いる。
レコード会社や事務所のいいなりに、キャラを変えて。
歌以外の仕事も、進んでしなきゃ、生き残れない。
だけど。
「もったいねぇな……俺が認めた歌姫なのに」
「あはは、まだ何の話も来てないんだから」
「売り込めば、イケるかもしれねぇぞ?」