君と、世界の果てで
紗江の声は、いつも通りだ。
当たり前だが、安心する。
「家にいる。来るか?」
『うん!』
本当に近くにいたらしく、紗江は直ぐに玄関のチャイムを鳴らした。
「近くに寄ったから……おじさんとおばさんは?」
「今日は夜までいない。上がれよ」
「はぁい。お邪魔しまぁす」
慣れた動作で、リボンが付いたパンプスを脱ぎ、玄関の端に寄せる。
そして一緒に階段を登っているとき……気づいた。
「あっ」
「え?」
「ちょっと、待ってろ」
陸のスマホを、出しっぱなしだ。
いくら陸でも、あんな画像は、あまり他人に見られたくないだろう。
紗江が勝手にいじるとは思えないが、念のため隠した方がいいな。
と、思っているうちに。
「なぁに?怪しい……えいっ」
「あ、コラ」
紗江は、俺の脇をすり抜けて、あっさり部屋に侵入した。
「何?何もないじゃない。
エロ本とか、エロDVDでも見てたのかと思った」
「いや、ちらかってるから……」
「そう?」
「ま、座れ」
「うん」