君と、世界の果てで
深音はそう言うと、いきなり抱きついてきた。
「コラ」
「王子様のキスは?」
「自宅でサカってんじゃねぇよ」
「……ごめんなさい……」
しゅん、とうなだれた姿が可哀想になってしまった。
深音は誕生日以来、発情期かと思うくらいベタベタしてくる。
浮かれてるだけなら、いいが。
本当は、不安を解消したいためなのかもしれない。
「……しょうがねぇな」
俺は何回、このセリフを言うのだろう。
彼女に、何かをねだられる度に言ってる気がする。
結局、いつも逆らえないからだ。
俺は深音の体を軽く抱きよせ、触れるだけの口づけをした。
「満足か?」
「……ちょびっと不満」
「アホ。
続きは、金曜な」
「うん!」
深音を納得させ、さぁ帰ろうとドアを開けると、カエルが潰れたような声がした。
「!!」
「パパ!!」
廊下を見ると、深音の父親が鼻を押さえてうずくまっていた。