君と、世界の果てで


ライブ前日の金曜日。


夕方、家まで迎えに行くと、ちょうど深音が陽気な両親に送り出されるところだった。



「堺沢さん、よろしくお願いします」


「もう……子供のお泊まり会みたい」


「そうそう、子供じゃないよなぁ。

まぁ、避妊はしっかりな、ハハハ!」


「パパのバカ!

ほっとこう、翼さん」


「あ……じゃあ、お預かりします」



バカと罵られても、親父さんは、行ってらっさーいと陽気に手を振った。


……人をなごませる家族だな……



「なんか、煙たい」


「あぁ……悪い」


「煙草増えたの?」


「ん?あぁ……」



昨日から、イライラが増している。


もう少し口がうまかったら、紗江からもっと情報を得られたかもしれないのに。


そんなことを思っても、後の祭りだってことはわかっているけれど。



「……親父さんも来たらいいのに……スゲェなごむし」


「えぇ?なごむ?ウザいだけでしょ」


「いや、意外と癒されるわ」


< 252 / 547 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop