君と、世界の果てで
ライブ前日の金曜日。
夕方、家まで迎えに行くと、ちょうど深音が陽気な両親に送り出されるところだった。
「堺沢さん、よろしくお願いします」
「もう……子供のお泊まり会みたい」
「そうそう、子供じゃないよなぁ。
まぁ、避妊はしっかりな、ハハハ!」
「パパのバカ!
ほっとこう、翼さん」
「あ……じゃあ、お預かりします」
バカと罵られても、親父さんは、行ってらっさーいと陽気に手を振った。
……人をなごませる家族だな……
「なんか、煙たい」
「あぁ……悪い」
「煙草増えたの?」
「ん?あぁ……」
昨日から、イライラが増している。
もう少し口がうまかったら、紗江からもっと情報を得られたかもしれないのに。
そんなことを思っても、後の祭りだってことはわかっているけれど。
「……親父さんも来たらいいのに……スゲェなごむし」
「えぇ?なごむ?ウザいだけでしょ」
「いや、意外と癒されるわ」