君と、世界の果てで
深音は真っ赤な顔で、包丁を俺に向けた。
無惨に切り刻まれた野菜の姿で、今まで料理などした事がないのは、明白だった。
「わかってるから!
ベースの練習してて!」
「いや、腹下したくねぇし……」
「食べれるモノだけ使うんだから、大丈夫だよ!」
そう言うと、俺はぽい、とキッチンから追い出されてしまった。
「米は、先にセットしとけよ。
炊けるまで30分はかかるからな」
わかってる、と怒鳴る深音を置いて、二階に退散した。
一階にいたら、どうしても口を出してしまいそうだから。
言われた通りに、ライブの曲順を確認したり、ベースを弾いているうちに。
米が無事に炊けたのか、ピロリロと間抜けな電子音が聞こえてきた。
その少し後に、
「できたよー」
と、俺を呼ぶ声がした。
さあ、どんなモノを食わされるのか。
「変なニオイは……しねぇな」
「大丈夫だってば……ひどい彼氏……」