君と、世界の果てで
しかし、そっと俺のシャツをつかみ、喜びを笑顔に変えた深音に、そんな事は言えなかった。
「パンダになるぞ」
「泣かないもん」
「ヨシ、ファンに恥ずかしくないように頑張れよ」
「言われなくても」
深音が膨れ、その頭を撫でる。
無意識にした行動を、崇文と渚に「やだやだ、バカップルは」と冷やかされた。
そうこうしているうちに、すぐに順番が来てしまった。
ステージに上がる直前、深音が無言で俺の手を握った。
目は、不安げに震えている。
俺は、その細い手を無言で握り返した。
強く、強く。
大丈夫だ。
俺は、お前の後ろにいるから。
そう念じたのが通じたのか、深音は微笑んで、手を離し。
背筋を伸ばし、舞台へ上がって行った。