君と、世界の果てで


深音は不安を全く感じさせない歌声で、一曲目を歌い終えた。


軽く自己紹介をする。


そして、すぐに2曲目、3曲目と続く。


俺たちはMCというものを、あまりしない。


そんなものでぐだぐだになるくらいなら、一曲でも多く歌を聴いてもらったほうがいい。



それはそうと……楽しい時間というのは、本当にあっという間だ。


魂を込めた言葉を放つ深音。


後ろでベースを弾く事で、キスよりも抱擁よりも、彼女の魂を近くに感じる。


彼女の体温も。


彼女の鼓動も。


音と一体になり、この指に伝わってくる。



「次は……珍しく、カバー曲、です」



深音が短く曲紹介をして、すぐに演奏が始まる。


前列を陣取った前からのファンが、あれ、という顔をした。


明らかに、今までのバンドのカラーと違うからだ。


WORLDS ENDの曲は、アップテンポの曲もバラードも、どこかに悲壮感が漂う。


愛されたいのに、愛されない。


愛を知りたいのに、わからない。


ただ生きるのが、精一杯。


そんな歌詞に乗せた曲が多かった。


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