君と、世界の果てで


だが、これはカバーだ。


和訳の歌詞をよく見てみたら、よくある恋の歌だった。



あなたがいなくて寂しい

だけど、いい想い出をくれてありがとう

あなたを忘れない



そんな歌だった。



いつもと違う爽やかなサウンドで、深音がスカートを翻し、軽やかに舞うと。


さっきまでの悲壮感漂う表情から、恋の想い出に浸る大人の女の顔になる。


前列から、「可愛い!」と声がした。


歌声も、泣き叫ぶような切ない声から、優しい春風のような、透き通った声に変わる。


この表現力が、深音の魅力だという事に、今更気づく。


練習の時にはわからなかった、観客を引き付ける実力。


彼女に、確かに宿る炎。




もっと、もっと。



歌ってくれ。



色んな色を。



その唇に乗せて。



もっと、もっと。



造りたい。



君に、命を吹き込まれる、愛の歌を。



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