君と、世界の果てで
大きな歓声と共に、幕は下りた。
前回のライブよりも、確かな手応えを感じた。
あのアレンジは、間違ってない。
深音は、やはり特別な歌姫だ。
彼女の魅力は、ライブを重ねる事に大きくなるだろう。
俺達は興奮が冷めないまま、楽器を片付けた。
「お疲れ」
「お疲れ様です!」
崇文も、ホクホクした顔をしている。
結局、持ち時間の30分内に、嫌がらせのような事は起こらなかった。
良かったぁと、崇文から安堵のため息が漏れた。
「あれ……大丈夫?」
不意に渚の心配そうな声が聞こえて、振り向くと。
深音が、控え室のすみで壁にもたれていた。
こくんとうなずき、笑うが、明らかに顔色が悪い。
「おい、どうした?」
俺が近づくと、首を横にふった。
「大丈夫……ちょっと、気持ち悪くて……。
お手洗い行ってきます」
そう言うと、鞄をつかんで、トイレへ早足で向かっていった。