君と、世界の果てで
「翼、歩けるか!?早く洗わないと!」
渚の声が耳元で響き、少し正気が戻ってくる。
「……ってぇんだよ……」
「わかってる。しっかりしろ」
渚に左腕で捕まり、なんとか立ち上がる。
そこで深音の足音が止まった。
「……翼さん!!」
悲鳴のような声がした。
深音は俺の右腕を見て、言葉を失う。
「深音ちゃん、落ち着いて。
水持ってる?」
深音が青い顔で鞄をあさると、前にサプリメントを飲んでいた時と同じ、ミネラルウォーターのペットボトルが出てきた。
震える指でキャップを開け、中身を全て俺の右腕に注ぐ。
「っ……う……っ!!」
痛い、痛い、痛い。
「深音ちゃん、あの子を頼む」
渚に促され、深音を残し、ライブハウスの裏口に向かい、何歩か歩いた。
その時、背後で、また悲鳴が聞こえた。