君と、世界の果てで
「……突然、硫酸をかけられたと。
よく女性をかばえましたね」
「とっさの事で、よく覚えてませんけど」
「いえ、誰にでもできる事じゃありません。
ところで、犯人に心当たりは?」
女性の目がキラキラ光る。
何が楽しいんだ。
事件をエンターテイメントと勘違いしやがって。
こっちは怪我するわ、ライブハウスに迷惑かけるわで散々だったんだ。
何とか不快感を圧し殺し、淡々と答える事に集中した。
「ありません」
「バンドを組んでいるそうですね。
昨夜もライブだったとか。
他のメンバーにトラブルを抱えてるような方は?」
「……いません」
「特に、ボーカルの女性は、すごく美人だそうですね。
彼女に逆恨みをしている人物なんかは?」
何で深音が出てくるんだ。
バンドのホームページを見て、特ダネを期待して来たのか。
ますます腹に冷たい物が溜まっていく。