君と、世界の果てで
駅前は、バレンタインデーのディスプレイで溢れている。
俺の気持ちなんてよそに、ピンクや赤の風船がふわふわと町を彩る。
いつもは、車移動だから。
前にこの駅に来たのは、クリスマスライブの時だった。
ここのパーキングに車を泊めたんだ。
昨日停めた車は、父親が実家に移動してくれた。
何だか、クリスマスのイルミネーションが、すごく昔の事に思えた。
ここは、俺が。
深音を好きだと、自覚してしまった場所だった。
不意に、携帯が鳴る。
左手で取り出し、慌てて出た。
「はい」
『あ、翼さん!?大丈夫だった?』
「崇文か……」
鳴った瞬間、深音だと思った。
もう昼過ぎなのに、メールも何もない。
「大丈夫だ。
ただ医師に、3週間はあまり動かすなと言われた。
迷惑かけて、すまん」