君と、世界の果てで
(2)宣告
海辺の家は、車が使えないと便が悪い。
電車とバスを乗り継ぎ、到着したのは待ち合わせの10分前だった。
昨夜遅くに来た連絡は、深音のスマホから、深音の母親がよこしたものだった。
『娘は体調不良で行けなくなりました。
代わりに私が荷物を引き取りにうかがいます』
そんなに悪いのか。
自分で連絡できないくらい。
いったい、どうしたと言うんだ。
不安を圧し殺して、急いで深音の荷物をかき集める。
土曜の朝に干した洗濯物も、そのままだ。
片手で苦戦していると、後ろで車のエンジン音がした。
「こんにちわ」
「あっ……こんにちわ」
深音の母親が、待ち合わせの時間通りに到着してしまったのだ。
「お手伝いします」
「い、いえいえ。俺がやりますから」
「片手じゃ不便でしょう。
お気になさらないで」
深音の母親は、少し疲れているようだったが、ふわりと笑った。