君と、世界の果てで


移植できる心臓が見つかるという事は。


深音に合う心臓を持った誰かが、脳死するという事。



例え、それでも。



両親は、それを願わずにいられない。



寒い、部屋の中。



両手の指先まで、痛いような感覚に襲われる。



「移植ができなければ……

いつ死んでしまうか、

わからないんですって」



涙が零れるのを必死にこらえて、母親は声を絞り出す。



「いつかは、わかりません。

ただ、

そんなに、

長くは、

もたないって……」



そこまで言い終えると。



両手を膝の上で握りしめ、母親は唇を噛んだ。



「そんな……」



嘘だ。



嘘だ。



嘘だ、嘘だ、嘘だ。



急に、そんなわけのわからない事を言わないでくれ。




何かの、冗談だろ。



少し前まで、あんなに元気だったじゃないか。


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