君と、世界の果てで


「本当なんですか」


「はい。

昨日は、ライブで疲れた後に走ったりしたから、発作を起こしたみたいです」


「…………」


「驚かれたでしょう……すみません。

深音に口止めされていたものですから……」



まさか。



そんな事が……。



あるわけない。



ありえない。



「堺沢さん、テレビで……

かばった女性が無傷で良かったって、おっしゃったでしょ……?」


「え……?」


「貴方は、そういう方なんです。

無意識に、自分よりも、周りの心配をしてしまう、優しい人」


「……そんな事……」



ありません、と言おうとした。



しかし深音の母親が、とうとうハンカチを取り出し、涙を拭いたのを見て。



何も、言えなくなった。



「深音は、そんな貴方が大好きなんだそうです」



つきん、と今日で一番の痛みが胸をえぐった。


< 297 / 547 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop