君と、世界の果てで

**


「……深音は帰るなり、発作を起こしました」



初めてでは無かったので、すぐに薬を飲ませました。


薬が効いて落ち着いた深音は、ぼんやり窓の外を見ながら、話を始めました。



「ママ、あたし、もう長くない気がするの……」


「何を言ってるの。

そのうち、移植できるわよ」


「いいよ……そしたら、代わりに誰か死んじゃうんだから。

そんなの、この世界にとっては、同じだよ」


「深音……どうしたの?」



深音は、ストーカーに襲われた事を話しました。


そして、貴方に助けていただいた事も。



「この前言ってた……陸さんのお兄さんが?」


「うん。かっこよかったな……」


「のんきねぇ。

明日来られるなら、お礼を言わなきゃ」


「うん、たくさん言っておいて。

あたし、翼さんには、本当に感謝してるから」



そう言った深音に、それまでの不安な表情は、もうありませんでした。


< 300 / 547 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop