君と、世界の果てで
電話を切ると、すぐに立ち上がってタクシー乗り場に走った。
深音、バカかお前。
まだ狙われるかもしれないのに、一人で出歩くなんて。
もし発作が起きたら、どうするんだ。
とにかく、探さなくては。
どこだ。
貸しスタジオ?
ライブハウス?
いや、バンドをやめるつもりで、それはないだろう。
まさか、海辺の家?
しかし、もう合鍵は持ってないし、それもない。
ちくしょう、あいつの行きそうな所がそれしか浮かばないなんて。
彼女の顔を思い出すと、不意に最近の思い出が頭をよぎった。
「あたし今日、誕生日なんです」
まさか。
まさか。
でも。
「どちらまで?」
「……水族館まで、お願いします」
もう、直感しか信じるものがない。
タクシーの運転手はかしこまりました、と車を発進させた。