君と、世界の果てで
……痛え。
思わず火傷した右ヒジを曲げちまった。
急いで走ったせいだ。
あの運転手、混んでるからって駐車場のはじっこに停まりやがって。
「……っ、はぁ……」
息が上がる。
やっとスナメリの水槽の前に着いた時には、痛みと疲れで汗だくだった。
「……っ……!」
直感が当たった。
水の匂いの中で、ふわりと優しく甘い、花の香りがした。
水槽の前に、青い光に照らされた、細い体がある。
探し求めた、愛しい彼女。
無駄のない、美しい横顔。
見覚えのあるコートに、見覚えのあるマフラー。
ただ金色の髪の毛だけが、茶色に染まっている。
黙って近づくと、俺の足音に気づいた彼女が、こちらを見た。
「あっ……うそ」
彼女は大きな目をさらに大きくして、口をぽかんと開けた。