君と、世界の果てで
「兄ちゃん、それ、何?」
このCDを買ったのは、中2の時。
陸は小5だった。
「ホラ、ビールのCMの歌だよ」
「ホントだ!」
「かっこいいだろ」
「うん!」
あの時、陸は可愛かったな。
俺も、もう少し素直だったか。
「このボンボンうなってるの、何?」
「ベースだよ」
「ベース?へぇ~」
「ベースの良し悪しが、バンドの出来を決めるんだ」
「へぇ~そうなんだ!兄ちゃんすげぇ~!」
なんか、わかったような事言ってたな、俺。
思い出すと苦笑がこぼれる。
俺は昔にピアノを習わされて、もともと音楽に興味があった。
思春期にありがちな、憧れで。
ベースを手に入れたのは、そのCDを買った半年後の事だった。
お年玉で買える、オモチャみたいなベースだった。
それでも陸は、
「すっげぇ!兄ちゃんかっけぇ!」
と、俺より興奮してたっけ。