君と、世界の果てで
(1)話題のバンド
3週間後。
俺と深音が、久しぶりに貸しスタジオのドアを開くと。
途端に、崇文がギターケースを放り出して、駆け寄った。
「二人ともぉぉぉ!!!!」
「わっ!!」
崇文は勢いよく、胸に飛び込んだ。
深音ではなく、俺の。
「ちょっと崇文!
そういう趣味だったの?」
「いや、女の子専門だよ。
良いじゃん、心配したんだから」
「オイ……離れろ、気色ワリィ……」
やっとの思いで崇文を引き剥がすと、後ろで渚がクスクス笑っているのが見えた。
俺から彼等に深音の事情を話したのは、1週間前。
崇文は号泣していた。
渚も同情したのか、就職しても、練習やライブに参加してくれる事になった。
「深音……、俺、何も知らなくて……」
崇文が情けない顔でが深音に声をかけると、彼女はうんざりした表情を見せた。