君と、世界の果てで
深音は珍しく派手ではない格好をしていた。
すとんとした、シンプルな深い緑色のワンピースは、意外なほど、よく似合っていた。
メイクも香水も最小限。
何だかいつもより綺麗だと思ったが、怒るといけないので黙っておく事にした。
「はじめまして」
深音がリビングに現れた途端、両親はカコーンと顎が外れたような顔をした。
「ど、どうぞ、おかけになって……」
ソファに深音を案内すると、母親が俺をキッチンに手招きした。
父親も後をついてくる。
「どういう事!?あの子、芸能人じゃないの!?」
ヒソヒソ声で、俺に詰め寄る。
「違うって。一般人。
テレビで、美人のボーカルって言ってただろ?」
「だ、だけどあんなに綺麗だと思わないじゃない」
無口な父親は、母親の言葉に同意して、コクコクうなずいた。