君と、世界の果てで
話はスタジオの練習に戻る。
崇文が、微妙な顔で切り出した。
「あの……硫酸事件の日のライブハウスから、オファーが来てんだけど……」
ポケットからメモを取り出した。
「3月の終わり……大体3週間後なんだけど……ワンマン、やらないかって……」
「はぁ……!?」
「意外だな」
渚の言う通り、かなり意外だ。
例のライブハウスには、迷惑をかけたから、もう出られないと思っていた。
救急車が来るまで、硫酸を洗い流してもらったり、深音を寝かせてもらったり。
あの事件の犯人に心当たりはないか、防犯カメラを見せろ、と警察の捜査も入ったらしい。
合わせて報道機関の取材も。
「……話題性?」
深音が、ぽつりと言った。
「俺もそう思うんだ。
翼さんの顔がテレビで流れて以降、ホームページのアクセス数が爆発的に増えてるんだよ」