君と、世界の果てで


そうだった。



どんな事態になろうとも、彼女を歌わせてやるつもりだったのに。



それがリアルに迫ってきて、途端に怖くなるなんて。



卑怯だよな。



彼女が俺に望むのは、心配なんかじゃない。



ただ、後ろでベースを弾く事。



彼女が歌える場所を作る事。



彼女が歌いたい歌を作る事。



迷う事はない。



それが、彼女が望む事の全てだ。



俺は、自分の頬を叩いて気合いを入れ直し、ピックをつかんだ。



見たことない程の観客の数。



お前達が見たいのは、美貌のボーカルか?



それとも、この醜い火傷の痕か?



シャツの袖のボタンを外し、腕をまくった。



すると、何故か一部から歓声が上がる。



さぁ。



行くか。



不安も傷痕も、お前の歌を載せるエネルギーに変えてやる。


< 368 / 547 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop